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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 「加筆再構成」雪乃その恋。其の六
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「加筆再構成」雪乃その恋。其の六

第十章
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健一の怪我に寄る入院は二度に渡る手術と、リハビリ期間を含めて三ヶ月を要した。
松葉杖を使っての自力走行が出来る様になるまでが半年、外出の時は、
車椅子が当分必要となり、学校も半年間休学する事となった。
母親もパートを辞めて健一の看病しなければならず、
生活費の困窮も目前の課題となってきた。

こんな時ににも親身に成って相談に乗って呉れるのは高野しか居ない。
当時高野は、某県立高校へ転勤していて、住まいも茅ヶ崎市に引っ越して居た。

雪乃は高野の住まいを訪ねた。
事の経緯を一通り聞いた処で高野は言った。
「うぅ雪乃も大変な荷物を背負ったな、
後一年経てば大学卒の資格だけでも取れるのにな」
「今大学を辞めてしまえば、高卒としての資格しか残らないもな」
「奨学金の債務も残るし、色々大変なことを処理していかなくては成らなくなるぞ」
「大卒の資格はお前ぐらいの頭が有れば資格認定試験でカバー出来るだろうが
金の問題は今後の負担に成るよな」
「今の大学の教授とも相談してご覧」
「今俺が考えられることは、一先ず大学は休学扱いとして貰い、
何年か後に3年か4年に編入させて貰って復学することだな」

「ゼミの教授にも相談してみますが、そんな事が出来るのでしょうか」

「そう言う例は結構ある筈だよ、特に成績の優秀な人間は大学でも
将来の教授候補などに「唾」を付けて置くためにも、学籍は其の侭にして
外国留学や他の大学への国内留学とか、民間企業への研究開発要員として
人材派遣をして居る例もある、それらは殆どが大学院生だけどな」

「一つサンプルリングしてみようか、雪乃の夢を将来に渡って叶える為にも、
保健師に成ると言うのは如何だ、其れとあわせて地方公務員試験の二種
を取ると良いよ、そして保健所や養護施設などで老人や障害者の介護の現場
を経験する事は決して無駄な事ではないしな」

「何れにしても今の状況では、
弟さんが退院してきてから、家に居る事になれば
その介護のためにお母さんは働け成るよな、
お母さんに変わって、雪乃が家族を養って行かなくては成らないから、
先ず働く所を見つけなければな」

「退院は何時頃に成りそうだ」

「来年の二月末頃に成りそうです」

「其れでは大学の三回生までは終了出来るんかも知れないな」

「役所関係は中途採用は余り遣らないから、
今から資格試験の準備をしてご覧、巧く行けば市の保健所
に就職出来るかも知れない。」
「俺も職員組合を通じて色々な処に話の出来る仲間が居るから
根回しはしてあげるよ」

「今回の出来事は、お前が夢を実現させる為に「天が配剤した」
チャンスかも知れないよ、災い転じて福となす、言うからな」
「挫けずに頑張れよ」
「先生の話を聞いて居ると勇気が湧きます、負けません、頑張ります」

雪乃は大学を三年で休学し高野の描いた道筋に沿って、保健士と
地方公務員試験の二種にも合格し、横浜市の職員と成って、
6年の間勤める事に成った。
6年の間に「普通自動車免許」「助産婦」「保育士」等の
資格試験にも挑戦し、その資格も全て合格した。
 
第十一章
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医者に成る夢は捨てる事無く、28歳に成った時大学に復学して4年
の後32歳にして念願の医師免許を手にする事が出来たのである。

その間の10年の間にも色々な事が起きた。
弟の怪我も完治して社会復帰し26歳の時に結婚した。
今は二人の子供も出来て居る。

母照代は健一の回復を待つかの様に、今度は照代が
病に倒れたが、半年余りで回復し、今は健一達と暮らしている。

高野の妻も「急性膵臓炎」と言う病気で53歳の若さで急死した。
雪乃が大学に復学した時期と略同じ頃で有った。
妻を亡くした高野と雪乃の恋は深く静かに進行していくのである。

高野治夫の妻、芳子は、元々身体が余り丈夫では無かったようだ。
治夫の話では、頻繁に流産を繰り返すので、卵管結束の不妊手術を
した後で、子宮筋腫になり、子宮摘出手術をしたそうだ。
永久に子供を生めなく成った芳子は、その後ホルモンのバランス異常の為か、
肥満に成り、足が痛い、背中が痛い、と全身の苦痛を訴えていた。

芳子が余りにも背中が痛いと言うので、自宅近くの病院に連れて行った。
其処では当初、胆石が有ると言われ、痛み止めの薬を処方されたが、
その薬の効果は無く、数日後「入院」して精密検査をする事になった。

雪乃はその知らせを受けてから、毎日仕事が終ると、茅ヶ崎まで通い
終電間際まで付き添って看病した。
雪乃の言うには、
「あの病院の処置は余り信頼出来ない、検査も検討違いの事を
してるように見えて仕方が無い、今日も腹の中を綺麗にするからと、
大量な下剤を飲ませ、浣腸をしていたが、身体の衰えは目に余る」
「何処か別な病院に転院させた方が良いのでは」とまで言い出した。

そして、その日の夜余りにも苦しむので、
雪乃が通って居た大学の教授に電話をして、事情を話すと、
「直ぐ大学病院に搬送して来い、下手すると手遅れに成るかも」
と言われ、教授から此処の院長に電話をしてもらって転院させる事にした。
  1. 純愛小説
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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