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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 お師匠はんに仕えて三十年。其の三
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お師匠はんに仕えて三十年。其の三

◇お師匠はんの心◇
一期一会07
二十年の歳月が流れ、あの時私が取り上げたお嬢さんが、腰掛の三客の円座に
お座りに成り、義理のお母様と露地の風情について楽しそうに話して居られます。

「さて・・・」
迎付けに来るお師匠はんの姿が見え、社長はん、奥様、お嬢様の順で
中門にお進みになられました。
亭主であるお師匠はんが中門の戸を開き、双方、うずくまって総礼となるのが作法です。
この後、もう一度腰掛けに戻り、間を置いてから席入りとなるわけです。
社長はん、連客、飛石を伝って蹲踞にいたり、手水を使います。

躙リ口へ消える社長はんのお姿を見ると、
やはり私は二十数年前の事を思い出さずにはおれません。

「坪井、頼むで」
「へい」
胸が張り裂けそうでした。茶室の見張りをしながら、お師匠はんと社長はんの気配を
背中に感じるのは辛うおした。躙リ口の傍で控えておった事もおした。
お師匠はんも知っておいでやした。私のお師匠はんに対する気持ちを、
それを知ってて戸の隙間を少し開けて置く様な酷いお人どした。
私は四十、まだ嫁も貰わず、お師匠はんの傍に仕えることだけが喜びの無骨な男どした。

今でも耳にこびりついています。
「ああ・・・ああっ」
躙リ口の隙間から、畳に頬をこすりつけるお師匠はんが見えました。それだけやおへん。
お師匠はんは戸の隙間から私を見ておい゛どした。
「どや、ええやろ」

社長はんは私と四つ違い。やっぱり働き盛りの精力漲るいう感じのお人どした。
強引にお師匠はんを口説きはりましたし、、私の反対を押し切って溺れはった
お師匠はんの気持ちも、今となっては判るような気がします。

「ほらっ」
「ああっ・・・」
うつ伏せにされ、着物をお尻に捲り上げたあられもない姿でお師匠はんと社長はんは
?がっておいでどした。社長はんが力まかせに腰をおしつけると、
「ああっ」
と悶えたお師匠はんの体が前へ進みました。
畳を頬でこすり、振り乱した髪の毛を口に咥えた妖艶な姿で、
お師匠はんが少しずつ、少しずつ躙リ口へ寄って来はったのを覚えています。


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一期一会08
(堪忍どす・・・堪忍しとくれやす!)
心の中で念じました。そやけどかっと見開いた眼を戸口からそらす事も出来ませんでした。

やがてゴト、ゴトリ、ゴトッ・・・という音が外に漏れました。その音に重なるように、
「ああっ・・・ううっ・・・あっ」
お師匠はんの喘ぎ声が隙間から聞こえました。頭が引き戸に当たる音です。
殺生な話しどすわ。二人の交接する様を掛金も掛けんと私に見せつけるんやから。
「ああっ!」あの時のお師はんの声、まるで昨日の様に耳に残っています。

そして二十数年の歳月。茶室は昔と同じ佇まいです。
敷居に手をつき、最後にお嬢さんがお入りになられました。
さすがに社長はんの娘はんや。というよりはお師匠はんの血や。
美しい仕草でみとれてしまいました。

二十数年前、躙リ口の隙間からチリ紙が落とされました。
小さく丸まったそれを拾い私は人目に触れないように袂に入れたのです。

「勘弥、あんた、いい人いてへんのか?」
その日、満たされた顔のお師匠はんが私に言いました。
「いい人どすか?」
「そうや、結婚したい人や」
「なに言いはるんやおもうたら・・・」
「冗談やあらへん。あんた。もう四十になったんやろ。
 何時までも一人でおったら不自由や、そうやろ?」
「私はそんなこと」
「どうや、なんやったらうちがええ人見つけたろか?」

お師匠はん、あの言葉は辛うおした。二十二からご当家へ仕えて十八年、
そんな私に気軽にあんな事を言うやなんて。
「考えときや」
あの夜、河原町でえらい飲んで荒れたんを覚えています。
もう自分は必要ない男なんやろか。お師匠はんにとっては邪魔なだけの存在なんやろか。
ええ、あの夜は寂しゅうて女も買いましたな。

あれから四ヶ月後のことでしたな。お師匠はんから妊娠を聞かされたんわ。
産む事は決めてはりましたけど、なにより私に相談してくれたんが嬉しおしたんです。
一期一会09
床には掛物、点前座には釜、棚には香台と羽箒が飾られています。
私は次の間で支度をしておりましたが、おそらく三人のお客はそういった工夫を
拝見していたことでしょう。

お師匠はんが茶室に入り、時候の挨拶、礼などが聞こえてきました。
私が茶室にはいることは許されておりませんよって、これからは茶事解説、
そして私とお師匠はんの関係などについてもう少し書くことにします。

正午茶事では炭点前というものがあります。これは簡単に申しますと、
後座のための濃茶の湯相を整えるという意味合いがあります。
棚に飾った香合と羽箒をとり、亭主であるお師匠はんはまず釜を上げ、
炉辺を掃き清めます。それを客が囲んで拝見するのです。

灰がまかれ、胴炭が入って炭つぎが終わると、
亭主は香をたき、客は香合拝見となるのです。
「これは見事な・・・」
社長はんが炭斗でしたか、それとも灰器かなにかについてお尋ねに成る声が漏れ、
聞こえてきました。

お師匠はんと社長はんの会話にお嬢さんの声が割って入ったとき、
次の間で聞いていた私は思わず息をのみました。その華やいだ鈴の音のような声が、
十代の頃のお師匠はんにそっくりだったからです。

「勘弥、こっちや、こっちやで」
私がたしか二十四で、お師匠はんが十四の春やったと思います。
「お嬢さん、あきまへん、走ったらあきません!」
家元の蔵には名物の茶器が秘蔵されており、
私がその整理と記録をしておった時の事です。

「壊れます、壊れますよってどうぞ、どうぞ走らんように!」
やんちゃな娘はんどした。当時、お師匠はんは中学の二年生。
濃紺に白のリボンの学生服がようお似合いになるおさげ髪の女の子どした。

ご長男、つまりお兄様とは年齢が親子ほども離れ、
甘やかされてお育ちになりはったもんですよって、
周囲の世話する者はそれはそれは手を焼いたものです。

「うちは叱られへんのや。もしもお茶碗が割れたら、それはみんな勘弥、あんたの責任やで」
「お嬢さん!」
「鬼さんこちら!」
当時、まさか家元の跡継ぎであられたお兄様が、
事故で亡くなるやなんて夢にも思わんことでしたから、お師匠はん、
つまりお嬢さんは自由気ままにお暮らしでした。
  1. 合縁奇縁
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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