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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 心から愛した女はただ一人。其の五
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心から愛した女はただ一人。其の五

◇200万円の情事
熟女専科160
それから数日たってのことだった。今度は加藤さんに呼び出された。
ホテルのバーだった。加藤さん一人だった。

あんな事が有った直後だけに、私は覚悟して臨んだ。
しかし、どんな事態に成っても、謝る様な事はしない積りでいた。
ホストクラブは女が男を買いに来るところ。
すべてセックスと金が介在する世界である。
売り物に買い物だから当たり前のことだ。そんなことぐらいは、
加藤さんぐらいの遊び人なら、わきまえていて当然だ。

「実は頼みがあるんだ・・・」
加藤さんの頼みとはこうだった。
「実は、妻がキミの事を大変気に入ったようなんだ。
 そこでたっての頼みと言うのは、妻を抱いては呉れないだろうか・・・」

夫が妻を抱けと言うのである。唐突な申し出に、私が返事に戸惑っていると、
「タダとはいわない。100万円出そう。
 そして妻が納得したら、もう100万・・・」

お志麻さんを抱けた上に、結果次第では200万円の大金が貰えるのだ。
「ただし条件がある。私のほかに何人かがその場に居合わせることだ」
人が見ている前でやれと言うのだ。過日、怪しげなショーに私を誘ったのは、
その伏線だったというわけだ。

「奥様はご承知なのですか。人に見られることにも・・・」
つまり先の金額には、口説き代も入っていると言う事なのだ。
口説き落とす自信はある。あのときだって強引に迫れば、
お志麻さんは落ちていた。

「せんだって妻が一人で行ったろう。それまでこの話に
 耳を貸そうともしなかった妻が、あの日以来、
 話を聞くようになった。何かあったのだと思うが・・・」
「いや別に何もありませんでした」
「何かあったとしても、そのことを咎める資格は、オレにはない。実は・・・」

自身が不能であること、お志麻さんをこんな形で利用するのは、
回春のための、最後の苦渋の選択だと言う事を加藤さんは告白した。


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ムームー
私は承諾した。200万円もさることながら、
お志麻さんを抱けることが魅力だった。

そこにお志麻さんが現われた。
「あら、あら・・・」
私を見て驚いたところから、ここでこんな話がされたことは、
お志麻さんも知らされていなかったに違いない。

加藤さんがボーイを呼んだ。車を手配させたようだ。
「キミ、今夜はいいんだろう?」
否も応もない。上客の加藤さんの誘いだから、
店の方も文句のあろうはずがない。
電話さえ入れておけばOKだ。

「キミたち先に行っててくれ。オレは後で行く。
 ひょっとしたら行けなくなるかもしれないけど、
 その時は二人で楽しんでくれ」

私とお志麻さんを乗せた車は山の手に向かった。
レンガ造りの豪華な建物の前で止まった。
どこぞの会社社長の別荘らしい。
部屋に案内されると、まず来ている物を全部ぬがされて、
頭からスッポリかぶるムームーのようなものを着せられた。

首のところがくびれているだけで、あとはスッポンポン。
もちろん下着はいっさいつけていない。そして覆面。
私の店でも、時々このような仮装めいたパーティーをやる。
顔を隠すと普段温和しい人が、信じられない位大胆になる。

客席に戻るとお志麻さんが待っていた。
お志麻さんも同じ様に覆面をしてムームーを着ていた。
「主人が何を言ったか知りませんが、冗談ですから
 本気にしないでくださいね」
お志麻さんはクギをさすようにそう言った。
しかし本気でない事は、私にはお見通しだった。

冗談なら、私と二人だけでこんな場所に来る筈がなかった。
この屋敷は名のある人たちが、
身分を隠して痴戯に耽るために造られたものだ。
なによりも、このコスチュームがその事を雄弁に物語っている。
ムームーの下のお志麻さんは、私同様にスッポンポンのはずだ。
  1. 夫婦の今と昔
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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