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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 雪乃と真利子と言う女。其の六
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雪乃と真利子と言う女。其の六

雪乃と真利子6-1
杉山真利子と約束した日は寒い夕方だった。
暗い空から舞い降りてくる黒い影の様な粉雪は、都会のビルの窓から漏れる照明や、
クリスマスの飾り付けのネオンの光が届く範囲に落ちて来ると急に白く変り、
歩道の敷石の上に音も無く解けていった。底冷えのする寒い日だった。
時折ビル街の谷間を吹き渡る風が疎らな通行人の背を丸めさせ、
小さなつむじ風と成って若い女性のスカートの裾を巻き上げていた。

私は約束の時間より三十分ほど前に指定場所に着き、道路の反対側に有る
喫茶店に入りコーヒーを飲みながら、待ち合わせ場所を眺めていた。

私は人と待ち合わせる場合相手を待つことは有っても、待たせることはしない、
と言う主義で居たから、もしかしたら、真利子が早めに来て待たせて居るかも知れないと
思い早めに来ていたので有る。

おおっ。未だ十五分も時間前だと言うのに、もう約束の場所に向かってゆっくり歩いてくる、
真理子の姿を確認した。ミントグリーンのオーバーコートを着込んでいた。

私は高校生時代に真利子にデートを申し込み、当日待ちくたびれた揚句、
すっぽかされた事があった。翌日学校で問い詰めると、女友達数名と映画を見に行って
私との約束は忘れていたと、しゃあしゃあと言ってろくに謝りもしなかった。

けっきょく其の事はうやむやのうちに葬られたが、私は其の悔しさを五十年持ち越していた。
五十年経過した現在、なんと其の真利子がデートの約束をして呉れたので有る。
年月が性格を多少丸くしたというより、二度にわたる離婚とそして生活苦がかっての
傲慢の角を折り、自尊心の鼻をへし折ったのかも知れない。

そして今日その約束した日で有る。
私は真利子がどれだけ、待たされる屈辱の思いに耐えられるかを観察する事にした。


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雪乃と真利子6-2
ぼんやりと人を待っている女性と言うものは、案外に女性をひっかけようとしている
遊び慣れた男性が相手のすっぽかしにイライラして動揺する瞬間を狙って居るものだ。

若い男性が年上の女性を吊り上げたり、遊び人風の男性が貞淑そうな奥さんを
ハントに成功するのも心の隙を突かれるからである。
約束を守らない相手への怒りから、ついつい普通なら見向きもしない様な
男の誘いに乗って、気が付けばラブホテルのベッドの上と言う事が珍しくない。

約束の七時を十分過ぎた辺りでそろそろ真利子のところへ行こうと思った矢先、
何処からとも無くサラリーマン風の成年が近寄って行った。無論会話は聞こえないが
男は真利子の背中に手を掛けて誘っている様子である。

元々真利子の顔立ちは美形だから化粧して綺麗なオーバーを羽織って
街角に立って居れば、声を掛ける男性が現れても不思議は無い。

真利子も男に誘われて悪い気はしないらしく、笑顔で顔の前で右手を左右に振っている。
男は諦めて立ち去った。七時二十分、私は喫茶店の表に出た。余り待たせて、
どうかして気紛れを起して通りすがりの男に着いて行かれては元も子もない。

私はタクシーを拾って四十分程の郊外にあるラブホテルの有る地域の名前を告げた。
そして、あそこに立っている女の前で止まって呉と伝えた。
タクシーは真利子が立って居る前にすっと止まる。私は一瞬別人かと思った。
でもそれは間違い無く真利子だった。

明るいミントグリーンのオーバーを着た真利子の口紅が凄く赤かった。
同窓会の時とは比較にならぬくらいに念入りな化粧をして来た真利子の見栄えする
顔に私はくらくらっときた。
『ごめんごめん。出掛けに野暮用が出来てね、
 おまけにタクシーが渋滞に巻き込まれてね、ごめん、ごめん。じゃあ車に乗って乗って』
タクシーを降りた私は有無を言わさず、口からでまかせを言って真利子の背中を押した。
雪乃と真利子6-3
「何処へ行くの?」
『何処へでも行くよ。真利子の好きな所へ行こう』
「じゃあ、兎に角二人っきりでお食事が出来て、ゆっくりお話できる静かな所が良いわ」
『了解、後の具体的な場所は僕に任せるね』
「いいわ」
私は運転手に郊外のラブホテルの名前を紙に書いて、
「じゃあ、ここにやってくれ」
と、運転手に手渡した。言葉で言ったら真利子は拒否するかもしれないと思ったからだ。
真利子を先に乗せて、私はその後から乗り込んだ。

車は夜の新潟市街を走り出した。私は積極的に話し始める。
タクシーの行き先についての真利子の注意力を逸らす為だった。
ケヤキ通りを抜けて左手に夜の海が見える、海岸通を走る頃には、
高校時代の思い出話に花が咲いた。

行く手には美味しい海鮮料理の店なども有るので、真利子はテッキリそこへ
行くものと思って居るようだった。
タクシーは何時しか海岸通を外れて山の中へ入り込んで行った。
行く先はモーテルの密集痴態である。

「はい、着きましたよ」
私は素早く料金を払う。タクシーは直ぐに居なくなった。
「あれっ。ここはどこなの」
『君が言った条件を総て兼ね備えたラブホテルさ』
「やだあ。私そんな積りじゃないのよ」
『じゃあ、どんなつもりなの』
真利子は言葉に詰まって黙り込んだ。
『此処に居たって寒いだけだよ。中でゆっくり話そうよ』
「お話だけよ」
『うん、お話だけだから中に入ろう』
フロントの叔母さんが品定めをするように私達を見た。
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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