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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 雪乃と真利子と言う女。其の七
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雪乃と真利子と言う女。其の七

雪乃と真利子7-1
『和室がいいんだが』
「七号室です」
真利子はフロントに背中を向けている。私はキーを受け取ると真利子の手を引いて、
ふかふかの絨毯の廊下を静かに歩いた。
「お部屋はラッキーセブンだったわね。あそこよ」
私より先に、真利子が部屋を見付けて呟いた。おやおやと思った。

七号室の扉を開くと、私は真利子を先に入れた、私が後ろ手でドアーノブを離すと
ガチャリと自動施錠の音がした。中には小さな玄関があり、
炬燵を中央に据えた和室が有った。其の続の間には男女が愛を育むダブルの豪華な
布団が敷かれているのだろう。

私はオーバーを脱いで乱暴に畳の上に放り出すと、真利子はまるで妻でも有るかの様に、
いそいそと私のオーバーを洋服掛けにキチンと掛けていた。
そして自分もオーバーを脱いで私のオーバーと一緒に並べて掛けた。
私は自宅に居るような気分に成って炬燵の電源を入れてどっかと座った。

「私こんな所に来る積りでデートの約束したのじゃないのよ。
 何処かの料理屋さんで海鮮料理でも食べながらゆっくり、
 話でもして見たいと思って来たのに、こんな所に連れ込んで
 ほんとに私をどうする積りなの」
『話をするためさ。でも表は寒いしこんな晩は、風呂にでも入って
 何か食べながらゆっくり話した方が良いと思ってね』

真利子は口では文句を言って居るが、身体はテキパキと動かして、
部屋に備え付けの茶道具を使ってお茶を入れている。
真利子は擬似夫婦を演じて居るように見えた。
『腹が減ったよね、何か食べようよ。君は何が良い』
「何でもいいわ」
私はテーブルの上に有ったメニューを眺めて、電話でフロントにチャーハンと餃子、
それにチャンポンを注文した。このラブホテルは近所の食堂と提携していて、
食事ができるのである。


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雪乃と真利子7-2
『食事の前にお風呂に入れば」
私は当然の様に言うと、真利子は嫌がるかと思いきや、
「じゃぁ、お先にお風呂戴くわ」
と言って脱衣室が無いので私達が居る部屋の隅で恥かしそうに服を脱ぎ始めた。
毎日身体を動かす仕事をして居るせいか、中高年女性にありがちな贅肉が全く
付いておらず、裸身になった姿は四十代の谷川雪乃にも負けないくらい若く見えた。

黒で統一した下着はかなりお金が掛かって居ると思われる。女性が下着におしゃれを
する深層心理には誰にも見えない所にもおしゃれをして居るのだという自負心と共に、
好きな男に下着姿を見て貰いたいと言う相反する心理が有ると言う。
更にそれを男の手で脱がされて、セックスされたい気持ちが有るとも言う。

浴室のドアが閉まり、摺りガラスの向こうで真利子の白い裸身がぼんやりと揺れて、
湯を使う音が聞こえてきた。真利子の態度と言葉とが遊離しているので、
真実の気持ちが今ひとつはっきりしないのだ。口ではあれこれ理屈を言っては居るが、
内心はセックスしたがって居るのかも知れなかった。

理屈を言う女にはこちらも理論武装して対応してその理論を打ち負かしてやれば、
後は拒絶する手段がなくなり、もろくも身体を開くタイプの女性が過去にも居た。
もしかすると真利子もそのタイプかもしれない。と思って居ると、
ドアが開く音がして真利子が風呂から上がってきた。

「ああ、いいお湯だったわ」
風呂上りの女性というものは、ただそれだけで色っぽい。
バスタオルで身体を隠しシヨーツを穿いている。

『真利子さんは綺麗な身体をしているね。子供は生まなかったのかい』
「最初の人は子供を生む暇も無く離婚されちゃつたんだもん。
 二度目の人は殆ど家に居なかったから一緒に寝た事が無いの。
 だから子供は生まれなかった」

部屋備え付けの浴衣に着替えた真利子は炬燵に足を入れた。
突然ドアをノックする音。
「食堂です」
私が腰を浮かしかけると、浴衣姿の真利子は目顔で制止して、
「私が受け取ってくるわ」
と言って気軽にさっと立ち上がった。まるで永年連れ添った夫婦みたいな感じがした。
雪乃と真利子7-3
「食器は、部屋の中に置いたままにしておいて下さい。
 廊下に置かれると猫などが来て散らかすそうですから、
 食器は部屋の中に置いといてくだされば、後でホテルの方が片付けるそうです」
食堂のおばさんの声である。ドアが閉まった。
「はーい、有り難うねぇ」真利子は出前の叔母さんにも如才無かった。

炬燵のテーブルの上にはラップを掛けた美味そうなチャンポンと餃子・チャーハンが
二人前並ぶ。

「はい、お箸」
真利子は私に割り箸を手渡すと、テキパキとお茶を新しく入れ直している。
やがて二人揃って食事と言うとき、真利子は、
「あっ、待って、私お祈りするから」
クリスチャンの真利子は食前の祈りを捧げた。
やがて二人は向かい合って食事を始めた。

「ねえ長野くん、私にお話って何かしら、食事をしながらでも話せることなら話してよ」
真利子は箸の先で小さくきざまれた赤白のカマボコを挟みながら私を見詰めた。

『なあ、同級生として、君を不幸から何とか救えないものかと考えたのさ』
「なあんだ、そんなことなの、私には信仰が有るからちっとも不幸じゃないわ」
私は麺を二回挟み損ねて落とす仕種をしながら言った。

『真利子さん、君が結婚に二度も失敗した原因は一体なんだろうか、
 と言う事を考えて見たんだよ。何事にも良く気がつくし、
 そして何事もきちんとする性格の君が何で、離婚されなきゃならないのだろうかってね』

二人は暫らく無言のまま、食事に専念した。でも私が投げかけた重い質問は
食事の間中、真利子の頭の中で己の過去を反省し続けさせて居たに相違なかった。
強い北風は旅人の衣服を剥ぎ取る事は出来ず、暖かい太陽の光が衣服を旅人自身に
自発的に脱がせる事に成功したように、私は真利子に発酵する時間を与えたのだ。

食事が終ると、真利子は二人の食器を纏めて入口のたたきの上に置いた。
  1. 二人の女
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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