こんな離婚夫婦もあってもいい。其の一
横浜在住の56歳の“明里さん(仮名)”と言う方の希望で書いてみました。
◇夫婦のようで夫婦でない
「結婚しないか、って誘われてるの」
明里がそんなことを言い出した時、私は“またか”と思う部分が半分
“聞き捨て成らないな”と思う部分が半分、と言う気分でした。
明里が私でない誰かのことを言い出すのは、これが初めてではありません。
けれども、其の都度私は胸の奥に名伏し難い疼きを感じてしまうのです。
その疼きが嫉妬だと言うことは、はっきりとわかっています。
もちろん、嫉妬を覚えて楽しくなるはずもありません。
私はその気持ちを素直に表情に浮かべながら、
「ふうん、どんな相手なんだ?」と、明里に聞き返していました。
大岡川沿いのホテルの最上階にあるレストランの、コースディナーを
一緒に食べながら、明里の話はこんなふうでした。
「業界では一流ってランクのメーカーのエリート組でね、
もう部長だって言ってたかな。やっぱバツイチなんだってさ。
知り合ったきっかけは友達の紹介。別に結婚相手を紹介するとか言う
感じじゃなくて、趣味の集まり・・・アウトドア系の集まりで、
日帰りのキャンプごっこに誘われて、っていう感じだったの。
半年ぐらい前からね、会うようになったのは」
フルコース料理の、ひとっひとっ、小さな皿が次から次へと運ばれてきます。
明里は、それをどんどんたいらげながら話を続けました。
「懲りない性格みたいね、その人は『一度失敗しても、まだ結婚したいんですか』
って聞いたら、
『一度や二度で女嫌いになれるほど、僕は女性に失望しちゃいないよ』ですって。
真顔で言うもんだから笑っちゃった」
明里は話しながら、私の顔を窺って、微妙な笑みを浮かべます。
私は“又始まったな”とおもいつつ、憮然とした表情を浮かべたまま、
言ってやります。
「で、どうするんだ。
某大手メーカーのエリート部長夫人の座に、おさまるのかい?」
明里は微妙な笑みを、思いっきりの笑みに変えて答えます。
「うふふ、妬いてくれてるのね。嬉しい。
しないわ結婚なんて。私はあなただけよ」
要するに私を煽ろうとしているのです。
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そんなことをしなくとも、私が明里を愛していると言う事は動かないのだから、
愛していると言えと言われれば、幾らでも言うのだから、よかろうに・・・
とも思うのですが、明里は、そういう手順なりパターンなりを踏襲しないと、
どうも納得しないようです。
(まあ、それもまた明里の可愛いところ、と思えば、思えないこともない)
私はしゃべり続ける明里の話を、なかば生返事で聞き流しながら、
両手のフォークとナイフを動かし続けて、サーブされる皿を片付け続けました。
デザートが済み、食後酒も適当に楽しんだところで、
「そろそろ行くか」と言います。明里は「うん」と頷き立ち上がります。
明里はそのままクロークへ行き、私はテーブルに黒服を呼び寄せて
会計を済ませます。ホテルのロビーで待っていると、明里が真新しい
スプリングコートを腕に抱えて遣って来ます。
「見たことのないコートだな」
「部長さんのプレゼント」
「気に入っているのか?どうも明里の趣味じゃなさそうだが」
「さ・あ・ね」
明里はコートを持っていない方の手を、私の腕に絡めてきます。
「お部屋、取ってあるのね?」
「もちろんだ、普通のラブホテルだけどね」
「それで十分なのよ。スウィートである必要なんか、ないわ」
明里が私に体を押し付け、肩に頭をこつんと当てました。
“可愛い奴だな”と思います。
明里。かつては私の妻だった女。とはいえ、別に嫌いあって
別れたわけではありません。離婚したとはいえ、
それは形ばかりのものに過ぎないのです。
けれども夫婦でないのは確かです。その微妙な距離・・・
私と明里との距離が、あるいわ心地良く、あるいは不安。
明里はむしろ不安を感じる時ほど、私を煽りたがるようです。
「なんだか、ちょっと酔っちゃったみたい」
明里が、ますます私にぴったりと体を押し付けてきます。
私はそんな明里の腰に腕を回し、そっと抱き寄せてやります。
リザーブしておいた部屋に入るなり、明里はクルリと体を反転させて、
正面から私に抱きついてきました。抱き返しながら顎を上げさせ、
軽くキスしてやると、其れだけで明里は、
「んううん・・・」と喉を鳴らし甘い息を吐きます。
その息には、さっき飲んだ酒の甘い匂いが混ざっていて、
私を軽く酔わせて呉れます。
私がそのまま、ブラウスとブラジャー越に、
Cカップの掌に、ピッタリしたサイズの乳房に触れようとすると、
明里は体を離し、ニッコリと微笑みました。
「まだ駄目よ。シャワーを浴びさせて。
今日は一日外を歩いていたから、一杯汗かいちゃってるの」
私は「ああ」と頷いて、明里を浴室へ行かせてやります。
上着をクロゼットに納め、
ネクタイを緩めて窓際に置かれた椅子に座り、
外に拡がる夜景を眺めながら、
(こんな関係も、悪くはないよな)
となんとなく思うのです。
◇夫婦のようで夫婦でない
「結婚しないか、って誘われてるの」
明里がそんなことを言い出した時、私は“またか”と思う部分が半分
“聞き捨て成らないな”と思う部分が半分、と言う気分でした。
明里が私でない誰かのことを言い出すのは、これが初めてではありません。
けれども、其の都度私は胸の奥に名伏し難い疼きを感じてしまうのです。
その疼きが嫉妬だと言うことは、はっきりとわかっています。
もちろん、嫉妬を覚えて楽しくなるはずもありません。
私はその気持ちを素直に表情に浮かべながら、
「ふうん、どんな相手なんだ?」と、明里に聞き返していました。
大岡川沿いのホテルの最上階にあるレストランの、コースディナーを
一緒に食べながら、明里の話はこんなふうでした。
「業界では一流ってランクのメーカーのエリート組でね、
もう部長だって言ってたかな。やっぱバツイチなんだってさ。
知り合ったきっかけは友達の紹介。別に結婚相手を紹介するとか言う
感じじゃなくて、趣味の集まり・・・アウトドア系の集まりで、
日帰りのキャンプごっこに誘われて、っていう感じだったの。
半年ぐらい前からね、会うようになったのは」
フルコース料理の、ひとっひとっ、小さな皿が次から次へと運ばれてきます。
明里は、それをどんどんたいらげながら話を続けました。
「懲りない性格みたいね、その人は『一度失敗しても、まだ結婚したいんですか』
って聞いたら、
『一度や二度で女嫌いになれるほど、僕は女性に失望しちゃいないよ』ですって。
真顔で言うもんだから笑っちゃった」
明里は話しながら、私の顔を窺って、微妙な笑みを浮かべます。
私は“又始まったな”とおもいつつ、憮然とした表情を浮かべたまま、
言ってやります。
「で、どうするんだ。
某大手メーカーのエリート部長夫人の座に、おさまるのかい?」
明里は微妙な笑みを、思いっきりの笑みに変えて答えます。
「うふふ、妬いてくれてるのね。嬉しい。
しないわ結婚なんて。私はあなただけよ」
要するに私を煽ろうとしているのです。
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そんなことをしなくとも、私が明里を愛していると言う事は動かないのだから、
愛していると言えと言われれば、幾らでも言うのだから、よかろうに・・・
とも思うのですが、明里は、そういう手順なりパターンなりを踏襲しないと、
どうも納得しないようです。
(まあ、それもまた明里の可愛いところ、と思えば、思えないこともない)
私はしゃべり続ける明里の話を、なかば生返事で聞き流しながら、
両手のフォークとナイフを動かし続けて、サーブされる皿を片付け続けました。
デザートが済み、食後酒も適当に楽しんだところで、
「そろそろ行くか」と言います。明里は「うん」と頷き立ち上がります。
明里はそのままクロークへ行き、私はテーブルに黒服を呼び寄せて
会計を済ませます。ホテルのロビーで待っていると、明里が真新しい
スプリングコートを腕に抱えて遣って来ます。
「見たことのないコートだな」
「部長さんのプレゼント」
「気に入っているのか?どうも明里の趣味じゃなさそうだが」
「さ・あ・ね」
明里はコートを持っていない方の手を、私の腕に絡めてきます。
「お部屋、取ってあるのね?」
「もちろんだ、普通のラブホテルだけどね」
「それで十分なのよ。スウィートである必要なんか、ないわ」
明里が私に体を押し付け、肩に頭をこつんと当てました。
“可愛い奴だな”と思います。
明里。かつては私の妻だった女。とはいえ、別に嫌いあって
別れたわけではありません。離婚したとはいえ、
それは形ばかりのものに過ぎないのです。
けれども夫婦でないのは確かです。その微妙な距離・・・
私と明里との距離が、あるいわ心地良く、あるいは不安。
明里はむしろ不安を感じる時ほど、私を煽りたがるようです。
「なんだか、ちょっと酔っちゃったみたい」
明里が、ますます私にぴったりと体を押し付けてきます。
私はそんな明里の腰に腕を回し、そっと抱き寄せてやります。
リザーブしておいた部屋に入るなり、明里はクルリと体を反転させて、
正面から私に抱きついてきました。抱き返しながら顎を上げさせ、
軽くキスしてやると、其れだけで明里は、
「んううん・・・」と喉を鳴らし甘い息を吐きます。
その息には、さっき飲んだ酒の甘い匂いが混ざっていて、
私を軽く酔わせて呉れます。
私がそのまま、ブラウスとブラジャー越に、
Cカップの掌に、ピッタリしたサイズの乳房に触れようとすると、
明里は体を離し、ニッコリと微笑みました。
「まだ駄目よ。シャワーを浴びさせて。
今日は一日外を歩いていたから、一杯汗かいちゃってるの」
私は「ああ」と頷いて、明里を浴室へ行かせてやります。
上着をクロゼットに納め、
ネクタイを緩めて窓際に置かれた椅子に座り、
外に拡がる夜景を眺めながら、
(こんな関係も、悪くはないよな)
となんとなく思うのです。
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ご挨拶
Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。
生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。
*このサイトは未成年にふさわしくない成人向け
(アダルト)のコンテンツが
含まれています。「アダルト」とは
「ポルノ」のみを指しているのではなく、
社会通念上、
18歳未満の者が閲覧することが
ふさわしくないコンテンツ
全般を指します。
したがって、アダルトコンテンツを
18歳未満の者が閲覧することを
禁止します。
*投稿・御意見・苦情など、何なりとお寄せ下さい。
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