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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 初恋の男を思い続けて生きた女Ⅱ。其の一
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初恋の男を思い続けて生きた女Ⅱ。其の一

◇現実と夢の境界◇
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夢の中で、私はまだ14、5の少女でした。
夢には、何時もモワモワッとしたドライアイスの煙のような
フレイムが掛かっていました。
真っ白い空間をバックに私は一人佇んでいました。
まるで突然、野原に置き去りにされた子犬のような心細い気持ちでした。

「あ、武朗・・・」
少しすると、霞の向こうから一人の少年がやってきました。
忘れもしない、それは川本武朗(仮名)でした。
彼はにこやかに私のほうに進んできます。
「やだ、武朗生きていたのね。死んだなんて嘘だったのね!」

途端に私の胸は熱いもので一杯になりました。私は思わず武朗に飛びついていました。
「そうとも、僕は死んでなんかいないさ。何時だって雅恵の側に居るんだよ」
と、武朗はすがり付いてきた私をその場に押し倒しました。
私はもう嬉しくて嬉しくて、涙を零さずにはいられませんでした。

「会いたかったわ、武朗、どうして急に姿を消しちゃったの、ひどいわッ」
「ごめんよ、どうしても行かなきゃならないところがあってね、
 僕だってずーっと雅恵に会いたかったんだ。でも、もう僕らはいつも一緒だよ」

ここでふいに私達は全裸になりました。先程まで服を着ていたはずなのに、
どちらも魔法に掛かったように突然素っ裸になってしまったのです。
これも、いつもの展開のパターンでした。

「好きだよ、雅恵、君とやりたい!できればずっと遣り続けていたい!」
武朗の股間はすでにリンリンと勃起していました。
私も爆発しそうなくらいに欲情していたのです。
私達の間にもう言葉はいりませんでした。

不思議なもので、
ときとして夢の中では現実よりも感度が研ぎ澄まされる現象が起こるようです。
私は日常をはるかに越えた欲情に取り憑かれていました。
全身が発情していました。髪の先から爪の先まで、私は異様なまでに興奮していました。

そして気が狂うかと思うほど欲情しているくせに、これは夢なんだ、
決して現実ではないのだ。と言う妙に冷静な判断をも失ってはいなかったのです。
この矛盾が夢の夢たる所以なのかもしれません。

私は武朗にむしゃぶりついていました。
早く、早くその逞しいもので私を貫いて、いっぱいにして・・・。
それは切ないほどの願望でした。そうなのです。武朗の夢を見る時は何時も、
泣きたくなる様な切ない感情で胸が押し潰されそうに成る私でした。


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画像 668
私にはその訳が判っています。武朗との思い出は常に涙色に彩られているからです。
20年以上経ったいまでも、その思い出は鮮烈な色合いで私の記憶にとどまっています。
「あっ、ああっ、た、達郎っ・・・」
そのせつな、私の下腹部をナイフの閃きさながらの一撃が襲いかかりました。
鋭く、深く、武朗の高まりが私を一気に奥まで貫き通したのです。

「いいよ雅恵、気持ちいいよっ、う、ううっ!」
武朗が猛然と律動しはじめました。私も彼の動きに合わせて腰を振り立てます。
少女の私でしたが、腰の使い方はもう一人前でした。
ぐんぐんと快美がせめぎ寄せてきます。快美が大きな塊となって、
子宮に押し寄せてくるのです。私は激しく下腹部を濡らしていました。

武朗の律動はまさしく現実離れしていました。そして、私の性感もまた通常では
考えられないほどに昂ぶっていたのです。私達は一塊になって動いていました。
上になり下になり、霞をペッド代わりにのたうちまわっていたのです。
素晴らしい一体感でした。

ワレメに感じる武朗の感覚が妙にリアルでした。
その感覚だけは、夢と言う仮想のものとは思えませんでした。
私のワレメの中で躍動する武朗の股間は、炎のように熱く、そして鋼のように硬かったのです。
それは、究極の快感といっても過言ではありませんでした。
夢の中で、武朗は私が現実では決して味わえない愉悦を与えてくれているのです。
この愉悦は、生身の武朗と交わっていた時のものと比較しても、とても勝負にはなりません。

「あああーっ、た、武朗!ダメよ、ダメよ、死んじゃうっ」
夢の中で私は叫んでいました。アクメの訪れにわななきながら彼にしがみついていました。
夢と言う曖昧模糊とした空間で、私ははっきりとアクメを知覚していたのです。
達すると思った瞬間、私はまた胎奥にマグマのごとき濁流を感じていました。
ああ、武朗も満足してくれたんだ・・・。
私はどこか悲しみを滲ませた幸福感に酔いしれていました。

そこでハッと目覚めるのが常でした。
起きてみると、私の全身は決まってぐっしょりと汗に濡れているのです。
しかし、私の肉体をぬらしているのは汗ばかりではありませんでした。

私は股のあいだがうっとうしく湿っているのに気付いていました。
これも毎度のことでした。あの夢を見ると、必ずパンティがジトジトと濡れているのです。
名称未定 639
それは、異常なくらいのお湿りでした。初めは小水でももらしたかと思ったのですが、
そのぬめりは愛液以外の何ものでもありませんでした。
パンティに手をやり、私は自然と顔を赤らめていました。
そして、隣にイビキをかいて眠っている夫に、申し訳ない気持ちで一杯になったのです。

いくら夢の中とはいえ、夫以外の男に抱かれてアクメまで貪ったのですから、
背徳の感情を抱かない訳にはいきません。
おまけに、シーッまで汚すかと言うくらいに股間をぬらしてしまって、
我ながら何と淫らな女だろうと恥じ入らずには居られませんでした。

夜中にこっそりパンティを取り替えている自分が、情けないような浅ましいような、
何とも複雑な気持ちでした。睡眠中にこんなにアソコが濡れてしまうなんて、
まるで男性の夢精です。果たして女性にも夢精という現象が起こりうるものなのでしょうか。
これを夢精と呼ぶのは、正しいかどうかは判りません。
けれど、この濡れようは夢精としか考えられない激しさでした。

どうして今頃になって武朗が夢に出て来るようになったのだろう。
五十近くに成って女だてらに夢精というのもおかしな話ですが、昔の恋人が夢に
現れる事になったこと自体も不思議と言えば不思議でした。

川本武朗・・・。彼とは、かれこれ30年近くも会ってはいません。
武朗は私の中学時代の恋人でした。そして、彼は私の決して忘れ得ぬ人なのです。
武朗の名を思い出しただけで、いまだに私の胸はキユッと締め付けられた様に成ります。
彼は私の恋人であったばかりでなく、当時の心の支えでもあったのです。

私の中学時代はいま考えてもそれは悲惨なものでした。
もし彼がいなければ、私はどんな人生を辿っていたものやら想像もつきません。
色々な意味で武朗は私の恩人でもありました。
しかし、もう会えなくなって何十年も経っているのに、どうして今頃武朗が夢の中に
現れるように成ったのか、初めはまったく見当もつきませんでした。

現在の私は、欲求不満と言う訳でもありません。もちろん結婚してかなりの年月が
経っていますので、それなりの夫婦生活に甘んじてはいますが、今の私はセックスの
不満うんぬんを並べていられる身分ではないのです。

いま私は、決して幸せな状況にあるとは言えません。
だからこそ、あの懐かしい思い出が夢に蘇ってくるのでしょうか。
私は突然、現れた昔の恋人の亡霊に戸惑っていました。
と同時に、またあの甘酸っぽく、
ほろ苦い日々がいやが上にも思いかえされるのでした。
  1. 愛と死を見つめて
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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

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