お師匠はんに仕えて三十年。其の一
◇一期一会◇
谷崎の卍(まんじ)を真似したわけやおへんが、此処の管理人さんが許可して
呉れはりましたんで、この告白は全編にわたり、京言葉で綴らせてもらいます。
なにしろ古い人間ですよって、箱根のお山を超えたことがありません。
京都で生まれて六十年、ずっと洛中で暮らしてきた井の中の蛙。
出来る事いうたら茶道具の目利きだけ。それが坪井勘弥という男なんです。
『山上宗二記』の中に、村田珠光の言葉として伝えられているこんな一説があります。
(藁家に名馬をつなげたるがごとし)
これにはいろいろな解釈がなされておりますが、一般的にはただの草庵、
藁家のような質素な空間に、名馬を置くようなことを説きはったとされています。
私はこの珠光さんの言葉を目にするたびに、実は自分の境遇と重ねて
勝手な解釈をしてしまう事があるんですわ。
茶人として生きる上で、かくあるべしという戒めではなく、
お師匠はんに繋がれて生き永らえて来た自分の人生の儚さを。
勿論私は名馬ではなくて駄馬でありましたが。
いや、お師匠はんにとっては農耕馬と言うたほうが当たってるかもしれまへんな。
ーーー
「ええか、四日やで」
この言葉が私をかなしませました。なにしろ日にちの事で念を押されたのは是が
初めてやったからです。私の表情を読まれたんでしょうな。
お師匠はんは私の薄くなった白髪のつむりを其の細く白い指で撫ではって、
「気い悪うしなや。ナーパスに成ってるんはうちのほうやから」
四日にお呼びしたお客。なるほどお師匠はんが神経質にならはるんも、
無理からぬことやと思いました。
「すまんこって」
「ううん、なにもあんたが詫びんならんことはない。
あんたはいつも通り、手伝ってくれたらええんや」
「へぇ」
障子紙に晩秋の淡い陽射しがあたり、竹林の影が揺れておりました。
お師匠はんは今年ちようど五十にならはりました。
五十歳。しかし世間の物差しではお師匠はんを計る事は出来ません。
お師匠はんは美しいお方。私にとっては日光、月光菩薩、大弁財天女、
十五童子の様に尊いお方。小さい頃からお世話を続けた私には、
血を分けた子供よりも大切なお人なのです。
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「このお乳を・・・噛んだ事も」
お師匠はんは足袋で畳を踏ん張り、私の腰に馬乗りになったままで、
自ら左の乳房を指で摘みはりました。
「噛んだことも・・・あったんや」
襦袢も腰巻も、離れ屋敷のあちらこちらに脱ぎ散らかされておりました。
お師匠はんの肩が冷えんようにと、私が掛けて差し上げた宿の浴衣が
つかまっているだけです。
「あの子、そんな事、もう覚えてないやろなぁ」
「そんなことおへんて」
「そない気休め言いな!」
いきなり乳房を摘んでいたお師匠はんの指が私の首に掛かりました。
貝殻のような美しい爪が喉に喰い込みます。
その痛さ、息苦しさも私にとっては心地良く感じるのです。
「・・・くっ・・・」
「勘弥、オマエ、何時から亭主面するようになりはったんや」
亭主面やなんて滅相も無い。顔を真っ赤にしながらも首を横に振る私。
「えっ、オマエはなぁ、只の奉公人やないか」
判ってます。十分に承知してます。出過ぎました。
「ええなぁ、生意気言うたら承知せんよって」
苦しい息の下でうなずく私、其の唇へお師匠はんの唇が重なりました。
「んんっ」
舌と舌が絡み合います。お師匠はんの乳首が私の胸を擦りました。
これは三十年以上続いた関係です。乳首が固くなって来たかどうか位は
すぐに判ります。
私の竿はお師匠はんの中に萎えかけて納まっていました。
それが少しずつですが漲り始めます。
六十の痩せた小男が、お師匠はんとするときは抜かずに漲る事が出来るのです。
前屈みに成ったので竿が引っ張られる感じがしました。
それがまた何とも具合がいいのです。
「ああ・・・勘弥ぁ・・・」
「お師匠はんっ」
頬と頬、擦り合わせて抱き合うお師匠はんと私。
宿の浴衣がお師匠はんの肩からすべり落ち、
白足袋だけの全裸になってしまはりました。
「吸うてみぃ、あの娘のかわりに、あんた、吸うてみぃ」
「へい、おおきに」
乳首をふくみ、固くなったそれをコリッと噛んで差し上げました。
「痛っ」
お師匠はん痛がりはりますが、それくらいは気持ちいいことは判っています。
背中から腰、むっちりと丸みのある臀部を撫でさすりながら、
こちらも気張って腰を畳から浮かせました。
「ああっ」
京都嵐山、萱のしげる小径の奥にひっそりとある小さな旅館。
私とお師匠はんが密会に使っている離れ屋敷。
炉に盛り上げられた細かい粗枝からは小さな炎と煙りが上がっております。
思えばお師匠はんの黒子に徹した人生は、たとえて言うならば、
ぬかるんだ土を足で掻き進むようなものでありました。
そんな事お師匠はんが聞きはったらまた怒りはると思いますが。
「ああ・・・、勘弥ぁ、あああっ」
「お師匠・・・お師匠はんっ」
六十の小男の上に、どちらかと言えば大柄な五十女が馬乗りになっています。
互いの下の毛は愛液で性器の土手にへばりつき、竿が納まった壷からは、
濡れ手拭をしごくような淫音が単調に漏れております。
世間様の目を盗み、師匠と奉公人という古い立場の男女がひと時の愛欲を貪る。
思えば三十代の頃から、私はお師匠はんにとりましてはチリ紙のようなもの。
都合のええ時に、ちょつと手を伸ばしたら取る事が出来る、下も満足が出来れば
後はポイと屑入れに捨てる事も出来る。私とはそんな役割りであったのです。
そしてその立場はこの年齢になった今も続いておるのです。
「ああ、きつい、きついで」
「お師匠っ、お師匠はんっ」
ヘルニアで腰を悪うして三年に成ります。
医者からはなるべく重いものを持ち上げる事はまかりならんと言われています。
そやけれでお師匠はんが気をやりはるその瞬間は、やっぱり懸命に成って病気の
腰を突き上げて差し上げるんです。それが私の勤めですよって。
「あっ!」
粗枝がはぜて小さな音を立てるように、お師匠はんが私の上で気をやりはりました。
大柄な、汗で湿った体が重くのしかかってきました。
谷崎の卍(まんじ)を真似したわけやおへんが、此処の管理人さんが許可して
呉れはりましたんで、この告白は全編にわたり、京言葉で綴らせてもらいます。
なにしろ古い人間ですよって、箱根のお山を超えたことがありません。
京都で生まれて六十年、ずっと洛中で暮らしてきた井の中の蛙。
出来る事いうたら茶道具の目利きだけ。それが坪井勘弥という男なんです。
『山上宗二記』の中に、村田珠光の言葉として伝えられているこんな一説があります。
(藁家に名馬をつなげたるがごとし)
これにはいろいろな解釈がなされておりますが、一般的にはただの草庵、
藁家のような質素な空間に、名馬を置くようなことを説きはったとされています。
私はこの珠光さんの言葉を目にするたびに、実は自分の境遇と重ねて
勝手な解釈をしてしまう事があるんですわ。
茶人として生きる上で、かくあるべしという戒めではなく、
お師匠はんに繋がれて生き永らえて来た自分の人生の儚さを。
勿論私は名馬ではなくて駄馬でありましたが。
いや、お師匠はんにとっては農耕馬と言うたほうが当たってるかもしれまへんな。
ーーー
「ええか、四日やで」
この言葉が私をかなしませました。なにしろ日にちの事で念を押されたのは是が
初めてやったからです。私の表情を読まれたんでしょうな。
お師匠はんは私の薄くなった白髪のつむりを其の細く白い指で撫ではって、
「気い悪うしなや。ナーパスに成ってるんはうちのほうやから」
四日にお呼びしたお客。なるほどお師匠はんが神経質にならはるんも、
無理からぬことやと思いました。
「すまんこって」
「ううん、なにもあんたが詫びんならんことはない。
あんたはいつも通り、手伝ってくれたらええんや」
「へぇ」
障子紙に晩秋の淡い陽射しがあたり、竹林の影が揺れておりました。
お師匠はんは今年ちようど五十にならはりました。
五十歳。しかし世間の物差しではお師匠はんを計る事は出来ません。
お師匠はんは美しいお方。私にとっては日光、月光菩薩、大弁財天女、
十五童子の様に尊いお方。小さい頃からお世話を続けた私には、
血を分けた子供よりも大切なお人なのです。
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「このお乳を・・・噛んだ事も」
お師匠はんは足袋で畳を踏ん張り、私の腰に馬乗りになったままで、
自ら左の乳房を指で摘みはりました。
「噛んだことも・・・あったんや」
襦袢も腰巻も、離れ屋敷のあちらこちらに脱ぎ散らかされておりました。
お師匠はんの肩が冷えんようにと、私が掛けて差し上げた宿の浴衣が
つかまっているだけです。
「あの子、そんな事、もう覚えてないやろなぁ」
「そんなことおへんて」
「そない気休め言いな!」
いきなり乳房を摘んでいたお師匠はんの指が私の首に掛かりました。
貝殻のような美しい爪が喉に喰い込みます。
その痛さ、息苦しさも私にとっては心地良く感じるのです。
「・・・くっ・・・」
「勘弥、オマエ、何時から亭主面するようになりはったんや」
亭主面やなんて滅相も無い。顔を真っ赤にしながらも首を横に振る私。
「えっ、オマエはなぁ、只の奉公人やないか」
判ってます。十分に承知してます。出過ぎました。
「ええなぁ、生意気言うたら承知せんよって」
苦しい息の下でうなずく私、其の唇へお師匠はんの唇が重なりました。
「んんっ」
舌と舌が絡み合います。お師匠はんの乳首が私の胸を擦りました。
これは三十年以上続いた関係です。乳首が固くなって来たかどうか位は
すぐに判ります。
私の竿はお師匠はんの中に萎えかけて納まっていました。
それが少しずつですが漲り始めます。
六十の痩せた小男が、お師匠はんとするときは抜かずに漲る事が出来るのです。
前屈みに成ったので竿が引っ張られる感じがしました。
それがまた何とも具合がいいのです。
「ああ・・・勘弥ぁ・・・」
「お師匠はんっ」
頬と頬、擦り合わせて抱き合うお師匠はんと私。
宿の浴衣がお師匠はんの肩からすべり落ち、
白足袋だけの全裸になってしまはりました。
「吸うてみぃ、あの娘のかわりに、あんた、吸うてみぃ」
「へい、おおきに」
乳首をふくみ、固くなったそれをコリッと噛んで差し上げました。
「痛っ」
お師匠はん痛がりはりますが、それくらいは気持ちいいことは判っています。
背中から腰、むっちりと丸みのある臀部を撫でさすりながら、
こちらも気張って腰を畳から浮かせました。
「ああっ」
京都嵐山、萱のしげる小径の奥にひっそりとある小さな旅館。
私とお師匠はんが密会に使っている離れ屋敷。
炉に盛り上げられた細かい粗枝からは小さな炎と煙りが上がっております。
思えばお師匠はんの黒子に徹した人生は、たとえて言うならば、
ぬかるんだ土を足で掻き進むようなものでありました。
そんな事お師匠はんが聞きはったらまた怒りはると思いますが。
「ああ・・・、勘弥ぁ、あああっ」
「お師匠・・・お師匠はんっ」
六十の小男の上に、どちらかと言えば大柄な五十女が馬乗りになっています。
互いの下の毛は愛液で性器の土手にへばりつき、竿が納まった壷からは、
濡れ手拭をしごくような淫音が単調に漏れております。
世間様の目を盗み、師匠と奉公人という古い立場の男女がひと時の愛欲を貪る。
思えば三十代の頃から、私はお師匠はんにとりましてはチリ紙のようなもの。
都合のええ時に、ちょつと手を伸ばしたら取る事が出来る、下も満足が出来れば
後はポイと屑入れに捨てる事も出来る。私とはそんな役割りであったのです。
そしてその立場はこの年齢になった今も続いておるのです。
「ああ、きつい、きついで」
「お師匠っ、お師匠はんっ」
ヘルニアで腰を悪うして三年に成ります。
医者からはなるべく重いものを持ち上げる事はまかりならんと言われています。
そやけれでお師匠はんが気をやりはるその瞬間は、やっぱり懸命に成って病気の
腰を突き上げて差し上げるんです。それが私の勤めですよって。
「あっ!」
粗枝がはぜて小さな音を立てるように、お師匠はんが私の上で気をやりはりました。
大柄な、汗で湿った体が重くのしかかってきました。
- 合縁奇縁
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ご挨拶
Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。
生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。
*このサイトは未成年にふさわしくない成人向け
(アダルト)のコンテンツが
含まれています。「アダルト」とは
「ポルノ」のみを指しているのではなく、
社会通念上、
18歳未満の者が閲覧することが
ふさわしくないコンテンツ
全般を指します。
したがって、アダルトコンテンツを
18歳未満の者が閲覧することを
禁止します。
*投稿・御意見・苦情など、何なりとお寄せ下さい。
尚「相互リンク」を希望される方も、
メールにてお申し込みください。
yorozuya_tarou02@yahoo.co.jp
相互リンクは「官能小説」主体のサイト様、
のみとさせていただきます。
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