熟女の湿った陰部。其の一
秋田県在住 Y・Tさん(67歳)投稿
◇男のロマン
連れ合いを亡くしたご同輩なら、男ヤモメの暮らしと言うものをご理解頂けるでしょう。
家内が生きていた頃は随分と諍いもしましたが、いざ失ってみるとそれはもう寂しいもので、
元来は快活な私も、六年前に家内を失ってからは随分と陰気な性格に
成ってしまったような気がいたします。
すでに年金暮らしの身で、たまにシルバー人材センターから依頼された仕事をして居りますが、
帰宅しても待ってくれている者はなく、冷蔵庫にしまって置いた残り物を胃の腑に押し込み、
休みの日には見ても居ないテレビを終日つけっぱなしで、
気がついてみると外はすでに暗くなっている・・・そんな毎日なのです。
家内は私が定年退職すると一年もしないうちに逝ってしまいました。
世間的には定年退職した本人が生きる張りを失って先立つのが筋でしょう。
しかし家内は、まるで「年のいった赤ん坊を定年まで見届けた」
と言わんばかりに先立ってしまったのです。
若い頃から酒やギャンブルは言うに及ばず、あちこちの女に入れ込んでは借金を重ねた
我が侭亭主でしたから、本当に申し訳ないことをしたと、ひたすら懺悔する日々です。
家内との間に一男一女を儲けましたが、彼らはすでに独立して家にはおらず、
早く私にも「お迎え」が来てくれないかと、己の丈夫さが恨めしくなる事さえあります。
しかし幸か不幸か、屈強なはずの肉体も下半身に限っては例外らしく、この所、我が逸物は
とんと役立たずで、結果、亡き家内に操を立てる格好になっております。あと十年若ければ、
家内の死を見届けるや、待ってましたとばかりに女漁りに街に繰り出していたところでしょうが?
久しぶりに飲みに出たのは、北風が立ち始めた晩秋の事でした。
冷蔵庫のストックにめぼしい食料も無く、やむなくかって贔屓にしていた焼き鳥屋へと
出掛けたのです。其の店でたまたま同席したのが彼女、小夜子でした。
それも本名ではないようです。なにしろ出会って三日目に、
彼女は私の前から忽然と姿を消してしまったのですから。
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しかし、彼女は戯曲「夕鶴」のおつうのようだったと、私は今でも思っております。
それほどまでに彼女は美しく、けなげで、めくるめく睦まじいひと時を私に与えて呉れたのです。
出逢った時の彼女は、場末の焼き鳥屋には不釣り合いなベージュのスーッを品よく着こなして、
なんとなくワケありな風情。色白でフンワリとした雰囲気の漂う美人でしたが、
商売女とも思えず、かといってその界隈に住んでいる女とも思えず・・・。
かっての私なら、目の色を変えて口説いていたことでしょう。
彼女は四十路は過ぎていたでしょうが、父娘ほども歳の違う
女とねんごろになるなんて、まさに男のロマンです。
しかし、ヤモメ暮らしに疲れた私に往年の勢いは無く、
程よく焼けた焼き鳥を肴に黙々と飲んで居るばかり。
声を掛けてきたのは彼女の方でした。
「どちらから?」
『ん?近所さ』
「そう。一杯いかが?」
『すまんね。あんたも飲みな』
銚子を傾け合いながらも弾まない会話。
回りのご同輩達から恨めしげな視線を浴びせられながら、淡々とした時間が流れました。
しかし、そうこうするうちに彼女が不意に涙ぐんだのです。
『どうした?』
「い、いえ・・・別に・・・」
『ならいい。もっと飲むかい?』
「いえ・・・」
『そうか。そろそろ帰った方がいいな。ご亭主が気を揉んでるぞ』
言った途端、彼女が唇を噛み締めました。
私の吐いた言葉が、あるいは琴線に触れたのかも知れません。
「すまん。余計なこと言っちゃったかな」
侘びを告げて立ち上がり、店の親父にお愛想を申し出ました。
もちろん彼女の分も含めてです。いわば一期一会の礼儀とでも申しましょうか、
馬鹿げた話かも知れませんが、私は若い頃から、
(酒の席で出会った相手に金を払わせるのは男の美学に反する)
と言う信念(?)を持っていたのです。
固辞する彼女を制してカネを払い、店を出ます。
彼女はすぐに追いかけてきました。
「困ります!」
『何が?』
「だって、見ず知らずの方にご馳走になるわけには参りません!」
『固いことは抜きだ。あんたのお陰で楽しい時間が過ごせた。ほんのお礼だよ』
「でも・・・」
『元気でな。しかし、どんな事情があるか知らんが、
ああいう店には女が一人で行かんほうがいい』
まるで映画の寅さんのようなセリフですが、そう告げてサラリと立ち去るのも、
私なりの男の美学でした。もっとも、これは私の逸物がすでに単なる排泄器官に
成り下がって居るからこその技であって、若い頃なら、こうは行かなかったでしよう。
彼女が再び追いかけてきたのは、それから一分もしないうちでした。私の手を引いて、
「今夜は一緒に泊まって泊まって下さい!私にもお礼をさせてください!」
とすがり付いて来たのです。ビジネスホテルとやらを予約してあるとのこと。
苦笑して辞退しました。
なにしろ我が家は、その店から歩いて二、三分の所にあったのですから。
「散らかし放題だが、差し支えなきゃウチに泊まりなさい。
老いぼれた男ヤモメだから気を遣う必要は無い。
宿銭は取らんよ。無駄遣いすることはないさ」
彼女がハッとして唇を噛み締めたのが、とても印象的でした。
◇男のロマン
連れ合いを亡くしたご同輩なら、男ヤモメの暮らしと言うものをご理解頂けるでしょう。
家内が生きていた頃は随分と諍いもしましたが、いざ失ってみるとそれはもう寂しいもので、
元来は快活な私も、六年前に家内を失ってからは随分と陰気な性格に
成ってしまったような気がいたします。
すでに年金暮らしの身で、たまにシルバー人材センターから依頼された仕事をして居りますが、
帰宅しても待ってくれている者はなく、冷蔵庫にしまって置いた残り物を胃の腑に押し込み、
休みの日には見ても居ないテレビを終日つけっぱなしで、
気がついてみると外はすでに暗くなっている・・・そんな毎日なのです。
家内は私が定年退職すると一年もしないうちに逝ってしまいました。
世間的には定年退職した本人が生きる張りを失って先立つのが筋でしょう。
しかし家内は、まるで「年のいった赤ん坊を定年まで見届けた」
と言わんばかりに先立ってしまったのです。
若い頃から酒やギャンブルは言うに及ばず、あちこちの女に入れ込んでは借金を重ねた
我が侭亭主でしたから、本当に申し訳ないことをしたと、ひたすら懺悔する日々です。
家内との間に一男一女を儲けましたが、彼らはすでに独立して家にはおらず、
早く私にも「お迎え」が来てくれないかと、己の丈夫さが恨めしくなる事さえあります。
しかし幸か不幸か、屈強なはずの肉体も下半身に限っては例外らしく、この所、我が逸物は
とんと役立たずで、結果、亡き家内に操を立てる格好になっております。あと十年若ければ、
家内の死を見届けるや、待ってましたとばかりに女漁りに街に繰り出していたところでしょうが?
久しぶりに飲みに出たのは、北風が立ち始めた晩秋の事でした。
冷蔵庫のストックにめぼしい食料も無く、やむなくかって贔屓にしていた焼き鳥屋へと
出掛けたのです。其の店でたまたま同席したのが彼女、小夜子でした。
それも本名ではないようです。なにしろ出会って三日目に、
彼女は私の前から忽然と姿を消してしまったのですから。
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しかし、彼女は戯曲「夕鶴」のおつうのようだったと、私は今でも思っております。
それほどまでに彼女は美しく、けなげで、めくるめく睦まじいひと時を私に与えて呉れたのです。
出逢った時の彼女は、場末の焼き鳥屋には不釣り合いなベージュのスーッを品よく着こなして、
なんとなくワケありな風情。色白でフンワリとした雰囲気の漂う美人でしたが、
商売女とも思えず、かといってその界隈に住んでいる女とも思えず・・・。
かっての私なら、目の色を変えて口説いていたことでしょう。
彼女は四十路は過ぎていたでしょうが、父娘ほども歳の違う
女とねんごろになるなんて、まさに男のロマンです。
しかし、ヤモメ暮らしに疲れた私に往年の勢いは無く、
程よく焼けた焼き鳥を肴に黙々と飲んで居るばかり。
声を掛けてきたのは彼女の方でした。
「どちらから?」
『ん?近所さ』
「そう。一杯いかが?」
『すまんね。あんたも飲みな』
銚子を傾け合いながらも弾まない会話。
回りのご同輩達から恨めしげな視線を浴びせられながら、淡々とした時間が流れました。
しかし、そうこうするうちに彼女が不意に涙ぐんだのです。
『どうした?』
「い、いえ・・・別に・・・」
『ならいい。もっと飲むかい?』
「いえ・・・」
『そうか。そろそろ帰った方がいいな。ご亭主が気を揉んでるぞ』
言った途端、彼女が唇を噛み締めました。
私の吐いた言葉が、あるいは琴線に触れたのかも知れません。
「すまん。余計なこと言っちゃったかな」
侘びを告げて立ち上がり、店の親父にお愛想を申し出ました。
もちろん彼女の分も含めてです。いわば一期一会の礼儀とでも申しましょうか、
馬鹿げた話かも知れませんが、私は若い頃から、
(酒の席で出会った相手に金を払わせるのは男の美学に反する)
と言う信念(?)を持っていたのです。
固辞する彼女を制してカネを払い、店を出ます。
彼女はすぐに追いかけてきました。
「困ります!」
『何が?』
「だって、見ず知らずの方にご馳走になるわけには参りません!」
『固いことは抜きだ。あんたのお陰で楽しい時間が過ごせた。ほんのお礼だよ』
「でも・・・」
『元気でな。しかし、どんな事情があるか知らんが、
ああいう店には女が一人で行かんほうがいい』
まるで映画の寅さんのようなセリフですが、そう告げてサラリと立ち去るのも、
私なりの男の美学でした。もっとも、これは私の逸物がすでに単なる排泄器官に
成り下がって居るからこその技であって、若い頃なら、こうは行かなかったでしよう。
彼女が再び追いかけてきたのは、それから一分もしないうちでした。私の手を引いて、
「今夜は一緒に泊まって泊まって下さい!私にもお礼をさせてください!」
とすがり付いて来たのです。ビジネスホテルとやらを予約してあるとのこと。
苦笑して辞退しました。
なにしろ我が家は、その店から歩いて二、三分の所にあったのですから。
「散らかし放題だが、差し支えなきゃウチに泊まりなさい。
老いぼれた男ヤモメだから気を遣う必要は無い。
宿銭は取らんよ。無駄遣いすることはないさ」
彼女がハッとして唇を噛み締めたのが、とても印象的でした。
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ご挨拶
Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。
生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。
*このサイトは未成年にふさわしくない成人向け
(アダルト)のコンテンツが
含まれています。「アダルト」とは
「ポルノ」のみを指しているのではなく、
社会通念上、
18歳未満の者が閲覧することが
ふさわしくないコンテンツ
全般を指します。
したがって、アダルトコンテンツを
18歳未満の者が閲覧することを
禁止します。
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