小説・大岡川ラブロマンス。其の十
◇夢色の朝
朝、ふッと眼を覚ましたアズサは、
「あら!嫌だわ、あたし・・・」
真赤に顔を火照らせた。気がついて見るとパンティが夢色の為にびっしょり汚れていた。
そっと辺りを見回すと、サツキとリサが軽い寝息を洩らしているきりで、
カーテンの向こうには港の方から朝陽が赤々と昇って来るところであった。
中学を出ただけのアズサは、例え夢の中とは言え女子高生のセーラー服を着た
自分の姿が懐かしく思えた。大学生の豊とサッカー場で会った光景、
それからいきなり料亭の離れ座敷での体の関係・・・。
夢とはいえ、それこそ本当の抱擁と同じ肉の疼きが感じられた。
カーテンを開けるとバラの盆栽の花壇がズラッと眼の中に飛び込んで来た。
青々として新芽が吹いているのが、アズサは自分の胸の中のようにさえ見えた。
「あたしこの頃、どうかしたのかしら」
下田と云い、大学生の豊と云い、アズサの胸中には若い男性に憧れる血で一杯であった。
老境に達した金満好色家達の玩具に甘えていた自分の境遇が急に、
バカバカしいものにさえ感じられた。
若い下田にしても、金銭で自分を玩具にしている。が、大学生の早川豊は違う。
たった一度の顔合わせでは有ったが、彼には下田のように財力も地位も無いが、
彼には誰にも見られない汚れの無い青春と、夢と、若さが溢れている。
その若さと青春に理知が備わっている。それは金では買えない尊いものである。
アズサは盆栽のバラに水を遣りながら、昨夜逢った大学生の早川豊を、
どんなことをしても手離すまいと思い定めた。
「そうだ、好い事が有るわ」アズサは昨夜の豊の言葉がふっと思いだされた。
「このお金は来年イギリスに留学する時に使う積りだったお金です」と、
ならば、このお金は此の侭貯金して置いて上げて、下田から貰った同額の百万円を
妹に渡せば同じ事である。そして彼が留学の時にこのお金を用立てて遣れば良い。
アズサは改めてハンドバックを引き寄せると、昨夜彼から預かったお金を改めて見た。
今日は店の“ショータイム”の折に披露する、新舞踊の稽古の日であった。
何時もよりは、早めに起きたアズサは妹の千恵子の処に電話を掛けようかと、
階下の談話室に降りて行った。
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「あら、もう起きたの、ねぇ、あたし一寸出掛けて来るけど、後は宜しく頼むわね」
朝寝坊のチーママ和子が既に外出の支度をしていた。
この頃はオーナー田原の目が煩く光っているので、和子は情夫の大学生と
密会するのに朝のうちを選んでいるようだ。
「えぇ、いいわ、いってらっしゃい」
今までは年下の大学生とそっと逢引をしていた和子を、まるで色狂いにしか
見えていなかったが、今朝はそうしたチーママの和子がいじらしいとさえ思われた。
「じゃお願いね、それからミドリさんに昨夜ウーさんから電話が有ったって言って頂戴。
体の具合が悪いので病院に行ってると嘘を言っておいたから」
ウーさんとはミドリのパトロンの一人である。
「えぇ、行ってらっしゃい」
大勢のホステスが居ると苦労が大変で有る。夫々のホステスが何人かのパトロンを
持っているので、それをうまく留守中に捌くのがひと仕事であった。
下手な返事をするとパトロンの方が怒って二度と来なくなるばかりか、中には、
パトロンが、脱税とか、疑獄事件で投獄の身と成る事もある。
朝、夕のテレビや新聞報道に思わずギクッとされるような事件はザラであった。
商売柄、そうした事件がある度に警察や税務署に呼び出される。
呼ばれれば元々弱い稼業であるから、さんざん係りの役人や刑事に、
嫌味を言われなくてはならないが、そのたびに、うまく事件の中心から外しては
帰るのである。表面は華やかな生活の中心に居るが、チーママの和子には
ホステス達の管理者としてのそんな側面もあるのである。
楽な商売ではなかった。
朝、ふッと眼を覚ましたアズサは、
「あら!嫌だわ、あたし・・・」
真赤に顔を火照らせた。気がついて見るとパンティが夢色の為にびっしょり汚れていた。
そっと辺りを見回すと、サツキとリサが軽い寝息を洩らしているきりで、
カーテンの向こうには港の方から朝陽が赤々と昇って来るところであった。
中学を出ただけのアズサは、例え夢の中とは言え女子高生のセーラー服を着た
自分の姿が懐かしく思えた。大学生の豊とサッカー場で会った光景、
それからいきなり料亭の離れ座敷での体の関係・・・。
夢とはいえ、それこそ本当の抱擁と同じ肉の疼きが感じられた。
カーテンを開けるとバラの盆栽の花壇がズラッと眼の中に飛び込んで来た。
青々として新芽が吹いているのが、アズサは自分の胸の中のようにさえ見えた。
「あたしこの頃、どうかしたのかしら」
下田と云い、大学生の豊と云い、アズサの胸中には若い男性に憧れる血で一杯であった。
老境に達した金満好色家達の玩具に甘えていた自分の境遇が急に、
バカバカしいものにさえ感じられた。
若い下田にしても、金銭で自分を玩具にしている。が、大学生の早川豊は違う。
たった一度の顔合わせでは有ったが、彼には下田のように財力も地位も無いが、
彼には誰にも見られない汚れの無い青春と、夢と、若さが溢れている。
その若さと青春に理知が備わっている。それは金では買えない尊いものである。
アズサは盆栽のバラに水を遣りながら、昨夜逢った大学生の早川豊を、
どんなことをしても手離すまいと思い定めた。
「そうだ、好い事が有るわ」アズサは昨夜の豊の言葉がふっと思いだされた。
「このお金は来年イギリスに留学する時に使う積りだったお金です」と、
ならば、このお金は此の侭貯金して置いて上げて、下田から貰った同額の百万円を
妹に渡せば同じ事である。そして彼が留学の時にこのお金を用立てて遣れば良い。
アズサは改めてハンドバックを引き寄せると、昨夜彼から預かったお金を改めて見た。
今日は店の“ショータイム”の折に披露する、新舞踊の稽古の日であった。
何時もよりは、早めに起きたアズサは妹の千恵子の処に電話を掛けようかと、
階下の談話室に降りて行った。
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「あら、もう起きたの、ねぇ、あたし一寸出掛けて来るけど、後は宜しく頼むわね」
朝寝坊のチーママ和子が既に外出の支度をしていた。
この頃はオーナー田原の目が煩く光っているので、和子は情夫の大学生と
密会するのに朝のうちを選んでいるようだ。
「えぇ、いいわ、いってらっしゃい」
今までは年下の大学生とそっと逢引をしていた和子を、まるで色狂いにしか
見えていなかったが、今朝はそうしたチーママの和子がいじらしいとさえ思われた。
「じゃお願いね、それからミドリさんに昨夜ウーさんから電話が有ったって言って頂戴。
体の具合が悪いので病院に行ってると嘘を言っておいたから」
ウーさんとはミドリのパトロンの一人である。
「えぇ、行ってらっしゃい」
大勢のホステスが居ると苦労が大変で有る。夫々のホステスが何人かのパトロンを
持っているので、それをうまく留守中に捌くのがひと仕事であった。
下手な返事をするとパトロンの方が怒って二度と来なくなるばかりか、中には、
パトロンが、脱税とか、疑獄事件で投獄の身と成る事もある。
朝、夕のテレビや新聞報道に思わずギクッとされるような事件はザラであった。
商売柄、そうした事件がある度に警察や税務署に呼び出される。
呼ばれれば元々弱い稼業であるから、さんざん係りの役人や刑事に、
嫌味を言われなくてはならないが、そのたびに、うまく事件の中心から外しては
帰るのである。表面は華やかな生活の中心に居るが、チーママの和子には
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楽な商売ではなかった。
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ご挨拶
Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。
生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。
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含まれています。「アダルト」とは
「ポルノ」のみを指しているのではなく、
社会通念上、
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