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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」 2010年12月14日
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詩(うた)と小説で描く「愛の世界」

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お師匠はんに仕えて三十年。其の一

◇一期一会◇
一期一会01
谷崎の卍(まんじ)を真似したわけやおへんが、此処の管理人さんが許可して
呉れはりましたんで、この告白は全編にわたり、京言葉で綴らせてもらいます。

なにしろ古い人間ですよって、箱根のお山を超えたことがありません。
京都で生まれて六十年、ずっと洛中で暮らしてきた井の中の蛙。
出来る事いうたら茶道具の目利きだけ。それが坪井勘弥という男なんです。

『山上宗二記』の中に、村田珠光の言葉として伝えられているこんな一説があります。
(藁家に名馬をつなげたるがごとし)
これにはいろいろな解釈がなされておりますが、一般的にはただの草庵、
藁家のような質素な空間に、名馬を置くようなことを説きはったとされています。

私はこの珠光さんの言葉を目にするたびに、実は自分の境遇と重ねて
勝手な解釈をしてしまう事があるんですわ。

茶人として生きる上で、かくあるべしという戒めではなく、
お師匠はんに繋がれて生き永らえて来た自分の人生の儚さを。
勿論私は名馬ではなくて駄馬でありましたが。
いや、お師匠はんにとっては農耕馬と言うたほうが当たってるかもしれまへんな。
ーーー
「ええか、四日やで」
この言葉が私をかなしませました。なにしろ日にちの事で念を押されたのは是が
初めてやったからです。私の表情を読まれたんでしょうな。
お師匠はんは私の薄くなった白髪のつむりを其の細く白い指で撫ではって、
「気い悪うしなや。ナーパスに成ってるんはうちのほうやから」

四日にお呼びしたお客。なるほどお師匠はんが神経質にならはるんも、
無理からぬことやと思いました。
「すまんこって」
「ううん、なにもあんたが詫びんならんことはない。
 あんたはいつも通り、手伝ってくれたらええんや」
「へぇ」

障子紙に晩秋の淡い陽射しがあたり、竹林の影が揺れておりました。
お師匠はんは今年ちようど五十にならはりました。
五十歳。しかし世間の物差しではお師匠はんを計る事は出来ません。

お師匠はんは美しいお方。私にとっては日光、月光菩薩、大弁財天女、
十五童子の様に尊いお方。小さい頃からお世話を続けた私には、
血を分けた子供よりも大切なお人なのです。


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お師匠はんに仕えて三十年。其の二

◇茶事に招かれた客◇
一期一会04
「お師匠はん、よろしいおすか?」
「かまへん」
「へい、ほなら」
お師匠はんを布団の上に横たえて、浴衣を体に掛けます。
座敷の片隅にある化粧台からティッシュを摘み取り、
膝をついてお師匠はんの太腿を覗き込みます。

「ごめんやす」
お師匠はんは無造作に立て膝にしはります。
愛液にまみれた観音様を、ティッシュで丁寧に拭いて差し上げるんです。

「勘弥、おまえ、まだか?」
お師匠はんが物憂げに首を傾け、私の股間を眺めながら言いはりました。
「へい、へへっ、そやけど、よろしゅうおす、こんなもん」
「そんな大きいしたままで、帰るんか?」
「もうそこまで元気なことおへんわ」

「上のほうも気持ち悪い、拭いてんか」
「へい」
オサネの辺りを拭く私の密かな喜び、
「せっかくや。それ土産にあげるわ」
「へ?」
「あんたの嫁はんには、私からや言うてなぁ。なんやったら毛絲でもつけようかいな」
「そんな無茶な」

よほど自分で言うた冗談がおかしかったんでしょうな。
お師匠はん気持ち良さそうに笑いはりました。
毛絲なんかつけてもろうたら困ります。
すぐに萎えてしもうて、家に帰って女房の顔を見る頃には、
小便だけのみすぼらしい道具に落ち着いてしまうんですから。

「ええか、勘弥、四日やで」
お師匠はん、また繰り返しはりました。
「へい、承知いたしております」
「大事なお客や、頼むで」
「へい」
「掛け軸も新しいもんがええ」
「明日にでも運ばせます」
「墨跡よりも絵がええなぁ」
「承知しました」


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お師匠はんに仕えて三十年。其の三

◇お師匠はんの心◇
一期一会07
二十年の歳月が流れ、あの時私が取り上げたお嬢さんが、腰掛の三客の円座に
お座りに成り、義理のお母様と露地の風情について楽しそうに話して居られます。

「さて・・・」
迎付けに来るお師匠はんの姿が見え、社長はん、奥様、お嬢様の順で
中門にお進みになられました。
亭主であるお師匠はんが中門の戸を開き、双方、うずくまって総礼となるのが作法です。
この後、もう一度腰掛けに戻り、間を置いてから席入りとなるわけです。
社長はん、連客、飛石を伝って蹲踞にいたり、手水を使います。

躙リ口へ消える社長はんのお姿を見ると、
やはり私は二十数年前の事を思い出さずにはおれません。

「坪井、頼むで」
「へい」
胸が張り裂けそうでした。茶室の見張りをしながら、お師匠はんと社長はんの気配を
背中に感じるのは辛うおした。躙リ口の傍で控えておった事もおした。
お師匠はんも知っておいでやした。私のお師匠はんに対する気持ちを、
それを知ってて戸の隙間を少し開けて置く様な酷いお人どした。
私は四十、まだ嫁も貰わず、お師匠はんの傍に仕えることだけが喜びの無骨な男どした。

今でも耳にこびりついています。
「ああ・・・ああっ」
躙リ口の隙間から、畳に頬をこすりつけるお師匠はんが見えました。それだけやおへん。
お師匠はんは戸の隙間から私を見ておい゛どした。
「どや、ええやろ」

社長はんは私と四つ違い。やっぱり働き盛りの精力漲るいう感じのお人どした。
強引にお師匠はんを口説きはりましたし、、私の反対を押し切って溺れはった
お師匠はんの気持ちも、今となっては判るような気がします。

「ほらっ」
「ああっ・・・」
うつ伏せにされ、着物をお尻に捲り上げたあられもない姿でお師匠はんと社長はんは
?がっておいでどした。社長はんが力まかせに腰をおしつけると、
「ああっ」
と悶えたお師匠はんの体が前へ進みました。
畳を頬でこすり、振り乱した髪の毛を口に咥えた妖艶な姿で、
お師匠はんが少しずつ、少しずつ躙リ口へ寄って来はったのを覚えています。


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お師匠はんに仕えて三十年。其の四

◇家元の一番蔵◇
一期一会10
悪戯が大好きで、蔵に入って来るなり私を鬼にして走り回る、
というような乱暴なことを平気でしはりました。家元の一番蔵です。
中には国宝級の名品も棚に並んでいるのです。
寿命が縮まる思いで、気が気やおへんどした。

「ほら、キャッチボールや」
ちょうど記録の為に桐の箱から出してあった高麗茶碗が棚に置いてありました。
それをお嬢さんが手に取り、私に投げようとしやはったんです。
「あきません、それはあきません!」
「勘弥が受け取ったらそんでええやないか」
「できません。お願いです、置いてください!」

そんな事を思い出していたとき、茶室では初炭が終わった気配が終わった気配がしました。

初炭の後は懐石となります。懐石とは、後座で濃茶をいただく前の軽食を言います。
また初炭の湯相を整えるという意味もあるのです。最初に少量のご飯と汁、
向付が出されます。そしてお酒となり、続いて煮物、焼物の順番です。

私は特に許され、茶道口のそばでお手伝いをいたしました。
吸物、八寸をお出ししながら、お嬢様とお師匠はん、
そして社長はんと奥様のお姿を拝見いたしました。

「美味しいわ」
お酒を一口召し上がり、向付の鱠(なます)をお口に運ばれるお嬢様を拝見すると、
どうしても十四歳の春の、お師匠はんと重なってしまいます。

「あはははっ、な、ちゃんとキャッチできたやろ?」
当時でも家の一軒や二軒は、簡単に建てる事が出来る位高価な高麗茶碗。
危うく受け取った私の胸をお嬢様が乱暴に押されたんです。

「な、なにをするんですか?」
「じっとしときっ!」
置く場所もなく、ただ膝を震わせて茶碗を手に立ち尽くす私の唇を、
背伸びをして抱きついてきたお嬢様の唇がふさぎました。
飴をなめてはったのでニッキの匂いが下のを覚えています。

「お父ちゃんに言うたらあかんで」
「お、お嬢さん・・・」
「二人の秘密やで、ええか?」
「・・・」
「勘弥はうちの召し使いや」


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お師匠はんに仕えて三十年。其の五

◇二十年の色懺悔◇
一期一会13
「結構でした」
懐石が終わり、お客は一旦席を出て腰掛けへお移りになられました。
これから後座の支度が始まります。

腰掛けでお客が休息をされている間、お師匠はんは床の掛物を巻き、
花入に花を活け、水差、茶入を飾り、湯相を確かめてから迎付の銅鑼を打ちました。

お客の席入りが始まるのです。
濃茶の点前について、私がここで詳しく書く必要もなかろうと思います。
私は茶道口のそばに控えておりました。
湯のたぎる音、茶筅の溶く音しか聞こえてまいりません。
私は瞑目し、その気配に耳を傾けておりました。

出産の後、赤ちゃんは直ぐに社長はんに引き取られていきました。
もちろん二十歳に成長されたお嬢様は、眼の前で茶の点前を披露している家元が、
自分の本当の母親だとは知りません。

「ええ茶事や」
社長はんの声が聞こえてきました。
後炭の後、煙草盆、千菓子など出されて薄茶となります。
濃茶と違い、薄茶は気楽なもので閑話など聞こえてきます。

「この軸は」
「へえ、それは・・・」
ゆるゆると茶入の話しなどした後、少しの間があり、
「お嬢さん、お綺麗にならはって」
とお師匠はんの華やいだ声が聞こえました。
私はきゅっと心臓を濡れた手で握られるような緊張を覚えました。

お師匠はんは気の強いお方。
五十にならはっても、眼の前に居る社長はんの奥様を遣り込め様となさる。
社長はんとはとおに手を切り、今では色々と家元のことで援助も頂いているお方やのに、
その眼の前でそういう事を平気で言いはる。

「奥様もお楽しみどすなぁ」
返事は聞こえてはきませんでした。曖昧に微笑む奥様の顔が目に浮かぶ様な沈黙でした。
そもそもこの茶事をお許し下さったのは社長はんのご好意でした。
娘も成人したこっちゃし、実の母親にもその姿を見せてやりたい。それやのにお師匠はんは、
「小さい頃から可愛らしいお子どした」
などと腋の下から冷や汗の出るようなことを平気で口にしはったんです。
一期一会の茶にしてはあまりに生臭い修羅場となったのです。

「ここでよろし」
躙リ口より出たお客が、潜り戸を開けたお師匠に見送りを辞退しました。
決まった茶事の作法の一つですが、なんや私には生々しく見えてしまいました。


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ご挨拶

万屋 太郎

Author:万屋 太郎
2006年9月に初稿をUPしてから
早くも14年が経過いたしました。

生まれ育った横浜を離れて6年前の1月に、
静岡県伊東市に移住いたしました。
山あり、湖あり、海あり、の自然環境はバッグンです。
伊東には多くの文人が別荘を持ち、多くの作品を
手がけて居られるようです、私もあやかって、
この自然環境の中での創作活動が出来ればと思っております。

*このサイトは未成年にふさわしくない成人向け
(アダルト)のコンテンツが
含まれています。「アダルト」とは
「ポルノ」のみを指しているのではなく、
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